高麗浪漫学会通信  第7号  

高麗浪漫学会通信  第7号  

高麗浪漫学会通信  第7号             2015年5月21日
編集・発行 高麗浪漫学会
〒350-1231 埼玉県日高市鹿山283番地5(すみや電気2F)
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5月16日は高麗郡が建郡された日です。1300年の節目まであと1年をきりました。記念の年に向け、より一層もり上げていきたいと思います。7月5日(日)には高麗浪漫学会の定期総会がありますので、会の活動について会員皆様で意見を交わしていただけたらと思います。また、同日午後1時から公開歴史講演会を予定しておりますので、あわせて御参加ください。(高麗浪漫学会理事 赤木隆幸)

《歴史コラム》       高麗人の足跡2 山城国相楽郡の高麗人

(高麗浪漫学会理事 赤木隆幸)

『倭名類聚抄』の山城国(現在の京都府)相楽(佐加良加・さからか)郡の項には、大狛郷と下狛郷の二つの郷名が記されています。また、『行基年譜』には「相楽郡高麗里」とあることから、この「狛」は「高麗」であって、大狛郷・下狛郷は高麗人(こまびと:高句麗からの渡来人)の関係地であったことが考えられます。ところで、相楽郡は京都府木津川市周辺に相当しますが、現在でも「山城町上狛」という地名が存在しており、そこにはかつて「高麗寺」という寺があったようです。『日本霊異記』中巻第18縁には、天平年間に山背国相楽郡の俗人と高麗寺の栄常(えいじょう)という僧が囲碁を打った話があり(注:やましろの表記は、山代→山背→山城と変遷)、遺跡(高麗寺跡)も検出されています。発掘成果により、高麗寺は塔と金堂を東西に配置する発起寺式伽藍配置(ほっきじしきがらんはいち)であったことがわかっています。そして、もっとも注目すべき点は、日本最古の寺院である飛鳥寺と同笵(粘土を成型する木型が同じ)の瓦が出土したことです。このことから高麗寺の創建を飛鳥時代とみることができます。ただし、高麗寺が現在残る遺構のように整備されたのは白鳳時代のことで、瓦も川原寺式のものが使用されたようです。

高麗寺跡 (640x360)

高麗寺跡

高麗寺の塔心礎 (640x360)

高麗寺の塔心礎

 

 

 

 

 

 

さて、このように地名や高麗寺跡によって、山城国相楽郡に高麗人がいたことが濃厚となったわけでありますが、それではいったいこれらの高麗人はいつごろから相楽郡に住んでいたのでしょうか。『日本書紀』欽明31年7月条・是月条には、「秋七月壬子朔に、高麗使(こまのつかい)が近江に到着した。この月、許勢臣猿(こせのおみさる)と吉士赤鳩(きしのあかはと)とを派遣して、難波津を出発し、船を狭狭波山(ささなみやま)に引き、飾船(かざりぶね)にして近江の北の山に迎えに行かせた。そのあと、高麗使を山背の高楲館(こまひのむろつみ)に引き入れ、東漢坂上直子麻呂(やまとのあやのさかのうえのあたいこまろ)と錦部首大石(にしごりべのおびとおおいわ)を派遣して、護衛させた。また、高麗の使者を相楽館(さがらかのむろつみ)で饗応した」とあり、欽明31年(570)に高句麗からの使者を山背国の高楲館(こまひのむろつみ)に迎え入れ、相楽館(さがらかのむろつみ)で饗応していたことがわかります。ここに2つの施設が見えますが、高楲館が宿泊施設で、相楽館が迎賓館だったのでしょうか。また、高楲館(こまひのむろつみ)とあるぐらいですから、この館は高句麗専用の施設だったのかもしれません。一方、欽明天皇の宮は磯城島金刺宮(しきしまのかなさしのみや)といって現在の奈良県桜井市にありました。おそらく高麗使は、近江(琵琶湖)から川をつたって船でやって来て、木津川の相楽郡高麗里あたりで船を降り、そこから陸路で都まで行ったということなのでしょう。つまり、相楽郡は交通の要衝で、日本海から近江経由でやってくることが多かった高麗使・高麗人の拠点となりうる場所だったのです。高麗使がこのルートをいつごろから使っていたのか定かではありませんが、欽明朝末年つまり6世後半には相楽郡に高麗人の往来があり、その後そこに住みついた高麗人がいたということでしょう。

時代はずっと降りますが、宝亀7年(776)に高麗郡出身の高麗朝臣福信(高倉朝臣福信)が近江国の国守(長官)に任じられています。もしかすると、福信の近江国守就任は高麗使が近江経由で来朝していたことに関係しているのかもしれません。もちろん近江国は東山道・東海道・北陸道の起点で、とても重要な国であったからこそ有能だった福信が国守に登用されたと考えることもできます。いずれ、近江国の高麗人の痕跡も調査したいと思います。
参考文献:京都府立山城郷土資料館『南山城の歴史と文化』2002年

《お知らせ・掲示板》
◆2015年7月5日(日)の日程についてのご案内
高麗浪漫学会の会員のみなさま方には、後日、再度正式に定期総会のご案内の通知をいたしますが、
7月5日(日)の日程は次のようになりますので、どうぞよろしくお願い致します。
1)10:30~11:00 会場:日高市文化体育館ひだかアリーナ1F会議室
高麗浪漫学会「第1回理事会及び企画運営委員会」の開催・・理事及び企画運営委員の方
2)11:30~12:00 会場:日高市文化体育館ひだかアリーナ1F会議室
高麗浪漫学会「第3回定期総会」の開催・・浪漫学会会員の方
平成26年度事業報告・決算、平成27年度事業計画・予算等
3)12:00~12:30 昼食タイム(昼食弁当500円・事前に予約を取ります)
4)12:30      公開歴史講演会・受付スタート:日高市文化体育館ひだかアリーナ
5)13:00~16:30 第2回公開歴史講演会「高麗郡建郡と東アジアの交流」
講師:佐藤 信・東京大学大学院教授  (入場無料600名)
(※詳細は別紙・開催案内パンフレットの通り)
6)17:30~19:30 高麗浪漫学会「懇親会」(居酒屋「はし本」・JR高麗川駅前)
「はし本」電話042-989-0187
参加費5000円。参加希望者は事務局:山田へお申込みください。
問合せ先:高麗浪漫学会・事務局 担当:山田英次 電話042-978-7432
E-mail info@komagun.jp