【報 告】テーマを絞った講座で、より深く歴史を知る 2022年度高麗郡歴史講座 全日程終了

【報 告】テーマを絞った講座で、より深く歴史を知る 2022年度高麗郡歴史講座 全日程終了

 昨年度に続き開講した『高麗郡歴史講座』は、お陰様で昨年より多くの皆様に受講いただき、終了しました。日本高麗浪漫学会の4人の講師が2回ずつの講座を担当し、テーマを絞ってより深くより詳しく解説しました。受講者は、延べ139人となり、昨年度より多くの方にご参加いただきました。

6月講座

6/11・25『武蔵国分寺の造営と高麗郡』講師:須田勉先生(日本高麗浪漫学会会長・元国士舘大学教授)

須田勉先生

 須田先生は、国分寺研究の第一人者です。1回目では、なぜ国分寺が各地に建立されたのかを、当時の出来事や時代背景をもとに解説しました。また、国分寺の伽藍配置に着目、特徴的な国分寺について解説しました。2回目では、武蔵国分寺の伽藍配置について詳しく解説しました。他の国分寺とは大きく異なる伽藍配置となった原因を様々な角度から考察し、武蔵国特有の事情を導き出しました。さらに高麗郡がそれにどのようにかかわっていったかを加味し、高麗人が関与したことの重要性を説きました。徐々に深層に迫る、須田先生の穏やかな語り口調に、受講者は引き込まれていた様子でした。40人受講。

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7月講座

7/9・23『地誌に見る江戸時代の高麗郡』講師:赤木隆幸先生(日本高麗浪漫学会研究員)

赤木隆幸先生

 赤木先生は、文献を中心に研究されていて、一昨年には『日本書記』を読み解く講座で講師をしました。今回は、江戸時代の高麗郡を『新編武蔵風土記稿』などから読み解きました。郡内の村々の事情や、寺社、地形など細かく記述されています。それらを読みあげ、解説していきました。中には、実際とは違った記述も見受けられ、これらはしっかり読み解くことでわかります。江戸時代の高麗郡については、これまで当会では扱ってきませんでしたので、近世の高麗郡の歴史を探る良い機会となりました。32人受講。

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9月講座

9/3・10『高麗郡建郡後の入間郡と高麗郡について ―遺跡の動向から建郡を考える―』講師:加藤恭朗先生(日本高麗浪漫学会研究員・国際文化財株式会社)

加藤恭朗先生

 加藤先生は、坂戸市教育委員会で坂戸市の遺跡を発掘されてきました。今も入間郡と高麗郡の関係を研究されています。1日目は「集落編」。入間郡内の空閑地に造られた古代高麗郡の位置を確認。そこから、若葉台遺跡(坂戸市・鶴ヶ島市)を解説し、多くの住居跡や掘立柱住居群、井戸、さらには墨書土器などの遺物から遺跡の性格を考察しました。同様に日高市の拾石・王神遺跡や狭山市の鳥の上遺跡も検討しました。2日目は「窯業跡編」。高麗郡の北に南比企窯跡群、南に東金子窯跡群を持つことから、それらの特徴を挙げ、そこから両窯跡群の関係性を探りました。最後に高麗郡との関係について考察しました。高麗郡建郡が周辺との深いかかわりを持ち、立体的に見えてくる講座となりました。32人受講。

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10月講座

10/22『相模の高麗若光』 ・ 29『高麗福信と高麗朝臣氏』

荒井秀規先生

 1日目は、奈良時代に東国へ配置される渡来人について紹介。その中から若光来日の背景や高麗郡と新羅郡の比較などの検討がなされました。続いて大磯町の御船祭木遣り歌や高麗山の看板、相模に伝わる若光の伝説から若光の存在に迫りました。2日目は、高麗福信について。さまざまな文献から高麗福信の生涯を追いました。3度務めた武蔵国司、肖奈、高麗、高倉と氏姓が変わったことなど、当時の政治情勢とも絡めながら解説しました。最後に、近年関係性が指摘されている福信と深大寺(調布市)について、文献だけでなく墨書土器や古墳からも、国宝「白鳳仏」をもたらした背景について考察しました。荒井先生は、「永年その土地で伝えられてきた歴史である伝説や伝承は一概に否定されるものではなく、史実とともに受容していったらよいのではなか(主旨)」との見解も述べました。私たち受講者にとってとても励みになる言葉でした。35人受講。

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 9月講座、10月講座には、深大寺学芸員の赤城高志さんが、また10月講座には、ノンフィクションライターの貴田正子さんが参加してくださいました。貴田さんは、『香薬師像の右手』(講談社)や『深大寺の白鳳仏: 武蔵野にもたらされた奇跡の国宝』(春秋社)の著者です。後者は、2017年国宝となった深大寺の白鳳仏『銅造釈迦如来倚像』の謎の解明に挑むドキュメンタリーです。そしてそこには高麗福信の名が・・・

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 さて、2023年度も高麗郡歴史講座を開講する予定です。募集数に限りはありますが、できるだけ多くの皆さんにご参加いただき、皆さんとともに歴史の謎解きをしていきたいと考えております。

高麗1300・日本高麗浪漫学会