【報 告】 5市の遺跡発掘最新情報が詳細に報告された 『古代遺跡調査発表会』12/13
2024年12月13日(金)、日高市総合福祉センター「高麗の郷」研修室で、『高麗郡歴史公開特別講座 高麗郡及び周辺地域の古代遺跡調査発表会』を開催しました。毎年12月は『高麗郡歴史シンポジウム』を開催していますが、今年は日高、飯能、狭山、坂戸、川越の5市から、各市教育委員会の担当者を招いて、最新の古代遺跡調査状況を発表していただくという、特別講座を企画しました。
当日は、地元、地域の歴史を知ることができ、さらには発掘調査の内容が聞けるとあって、平日にもかかわらず、5市はもとより県外からも参加を得て97名になりました。
開会にあたって主催者から、高麗1300の高麗文康副会長と日本高麗浪漫学会の新井孝重会長が挨拶しました。
*******************************
<日高市>
「王神遺跡11区・12区の発掘調査成果」
発表者:日高市教育委員会 大熊雅弘さん
県立日高高校西側にあたる王神遺跡11区と12区の調査結果が紹介されました。高麗郡の郡家があったと推定されている王神遺跡の発掘内容とあって興味深い出土品の発表ではありましたが、郡家と正式に確証されるものは見つかっていないとのことでした。しかし、さまざまな状況証拠はかなりそろいつつあると感じました。
<飯能市>
「新井原遺跡と張摩久保遺跡の発掘調査成果」
発表者:飯能市教育委員会 富元久美子さん
張摩久保遺跡などは高麗郡建郡(716年)の直後の移住の住居遺跡で、特にカマドの形態について解説していただきました。また新井原遺跡の出土品として紹介された「土馬(どば)」は、大変珍しい形態で河川信仰にまつわるものとのこと。会場の皆さんもとても興味を抱いてた様子でした。
<狭山市>
「鳥ノ上遺跡の発掘調査成果」
発表者:狭山市教育委員会 三ツ木康介さん
鳥の上遺跡は、入間川左岸の台地上に位置する大きな遺跡で、数多くの出土品が発掘されています。その性格については、建物跡の形態から、住居というよりも倉庫との可能性が考えられ、集落の盛隆が東金子窯の「国分寺の創建」「国分寺の再建」とリンクしているため、物資の集積地または木材の加工場の可能性が考えられるとのことでした。
*******************************
<坂戸市>
「坂戸神社遺跡5区発掘調査成果と周辺遺跡」
発表者:坂戸市立歴史民俗資料館 渡辺愼也さん
坂戸神社遺跡は、坂戸市中央部の坂戸台地上に位置し、坂戸駅に大変近接している遺跡です。近くに並列して山田遺跡があり、さらにその先には若葉台遺跡があります。坂戸神社遺跡と山田遺跡の共通する点は、河川や湧水点もなく、水源に乏しい土地であこと。出土遺物などから、手工業生産を伴う住居兼作業場であったと考えられ、専門的な工人の存在も想定できるとのことでした。
<川越市>
「国指定史跡山王塚古墳の発掘調査」
発表者:川越市教育委員会 平野寛之さん
全国には17万基の古墳がある中で、山王塚のような上円下方墳は6例しか事例はなく、大変希少性の高い古墳。その中でも川越の山王塚古墳は国内最大級の規模の古墳とのことです。出土遺物から7世紀第3四半期に築造されたと考えられるとのこと。とくに西側には東山道武蔵路があり、その国家的な武蔵路の敷設を担った入間地域の在地首長である有力な豪族の古墳と推定されるそうです。
最後に、日本高麗浪漫学会研究員の加藤恭朗さんが、「まとめ」として総括しました。最近では、川越市の山王塚古墳が国指定され、狭山市では鳥ノ上遺跡が話題となっていましたが、まだ報告書として発表されていない内容も含め、各担当者より一般の皆さんに分かり易く発掘成果を発表していただきました。日高市・飯能市・狭山市・坂戸市の4市については、奈良・平安時代の遺跡による出土品を主とした調査内容の発表であり、川越市は古墳時代後期の大型の上円下方墳の発掘経緯の発表でした。今回の5市揃っての遺跡調査発表会を通じ、やはり入間・高麗地域の全体的な古代史の概要を理解するに当たっては、必要な発表会と感じました。
*******************************
会場には、出土品も展示され、よりリアルに発掘の成果を知ることができました。
平日にもかかわらず、多くの皆様にご参加いただきました。誠にありがとうございました。
さて、2025年3月9日(日)には、第7回高麗郡中世歴史講演会を開催します。詳細が決まり次第ホームページやチラシでご案内いたしますので、奮ってご参加ください。
<予 告>
第7回高麗郡中世歴史講演会
「豊臣時代の近隣世界 その歴史を深掘りする!」
<講演> 演題:異文化接触としての戦争
講師:村井章介先生(東京大学名誉教授)
日時:2025年3月9日(日)
会場:日高市総合福祉センター「高麗の郷」
※参加申込受付は、2月6日より