【報 告】古代甲斐国の魅力を満喫・・・渡来文化を巡るバスツアー 10/14

【報 告】古代甲斐国の魅力を満喫・・・渡来文化を巡るバスツアー 10/14

 2019年に上野国から始まった「渡来文化の歴史を巡る旅シリーズ 古代渡来文化遺跡を巡る日帰りバスツアー」は、昨年のコロナ禍をすり抜け?毎年開催、今年で3回目となりました。運よく?緊急事態宣言が9月末で解除され、10月14日木曜日、晴れて甲斐国へ。

今年も紫色のバス「藤交通」さんにお世話になりました

 本企画は、716年に建郡された高麗郡に移住してきた東国七国(駿河・甲斐・相模・上総・下総・常陸・下野)の古代渡来文化遺跡を訪ねようと、古代遺跡の宝庫・上野国を加えた八国を巡る、言わば「大人の修学旅行」です。

 甲斐国には、かつて巨麻郡が置かれていて、高麗郡とのつながりにも興味が湧きます。昨年に続きコロナ対策のため人数を絞って募集、当日は27人が参加しました。

 山梨県には、当会と同じ民間団体の「積石塚・渡来人研究会」があり、今回は、下見段階から会長の末木健先生にご指導いただき、さらに当日もバスに同乗して詳しく解説していただきました。末木先生は、山梨県考古学研究会の会長でもいらっしゃいます。

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 昨晩までの雨から一転、朝から秋空となりました。午前7時30分高麗神社を出発、高麗川駅、坂戸駅を経て、甲斐国へ向かいました。

 まずは、山梨県立博物館へ。ここで、末木先生と合流しました。

山梨県立博物館
中庭からの秋空

 館内では、学芸幹の森原さんの案内で古代史を中心に見学しました。館内に入ると大きな三角形のオブジェ?が。実は、三方山に囲まれた山梨県を表しているのです。床は甲府盆地になっています。森原さんが、貼り紙をしながら遺跡の場所を示してくれました。信濃国、駿河国、相模国とそれぞれ山を縫ってつながっていることがわかります。

山梨県をオブジェ風に表現!?
県立博物館の森原さん(右)

 展示で最も目を引いたのは「甲斐の黒駒」。かつては馬の生産が盛んで、天皇の直営牧場「御牧(みまき)」が三か所あったそうです。鎧や馬具などが展示され、床には「百々(どうどう)遺跡」で発見された馬埋葬跡の実物大写真が貼られています。四頭の馬が並んで横たわっている様子がわかります。「甲斐の黒駒」は都でも大変優れた馬として重用されたそうです。そうした記録も展示されています。(写真撮影不可なのでご容赦ください)

遺跡の場所に名前を貼っていきます
位置関係がよくわかりました

 そのほか館内には、武田信玄公をはじめ、それぞれテーマに沿って展示されていて、じっくりと見学するには半日以上かかります。ぜひ時間をとって訪ねてみてください。

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 博物館から5分程で「姥塚古墳」に到着しました。

右の建物が南照院の本堂、正面が姥塚古墳。

 ここで、笛吹市教育委員会の松本さんと江草さんが出迎えてくれました。古墳は、南照寺本堂の裏手にあります。

まずは末木先生が解説
笛吹市教育委員会の松本さん(左)と江草さん

 姥塚古墳は、6世紀後半に造られた横穴式石室の古墳です。東日本随一というだけあって、石室の奥行きは約18mもあり、入口も大人が立ったまま入れる広さ。入口には巨大な石があり、天井が崩れて落ちたものとのこと。石室奥の天井はそれよりも大きい3mはある巨大な石が使われています。

入口も大人が立って入れます。左には崩れた天井の石。
側面は整然と石が積まれ、天井は大きな石。
参加者の皆さん

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 10分程で甲斐国分寺跡へ

 四方が見渡せる広々とした場所にありました。甲斐国分寺も、741年の聖武天皇が発した「国分寺建立の詔」によって造られました。南北330m、東西255mの広さがあり、講堂、金堂、七重塔の基礎が今も残っています。

江草さんが説明してくださいました
パンフレットで確認しながら
皆さん聞き入っています
伽藍配置を画で説明

 ここでも、引き続き松本さんと江草さんが案内、瓦などの出土物も持ってきてくださり、現場で見ることができました。

 甲斐国分寺跡で最も注目したのは、七重塔の露盤が残っていることです。日本高麗浪漫学会の須田会長が、詳しく解説してくれました。露盤とは、塔の一番上の屋根から伸びる相輪の根元にあるもの。これが地面に落ちて残っています。石で造られ、重さは約2t、これが塔の屋根の上にあったわけです。露盤から少し離れたところに、塔の跡があります。礎石も整然と残っており、中心には穴のある大きな心柱(舎利孔)があります。

露盤について、須田会長自ら解説
この大きな石が「露盤」

 須田会長によれば甲斐国分寺の塔は七重の塔であることは、文献で確認されていて、5~60mほどの高さであったとのこと。

解説板。伽藍配置と写真で解りやすいです。
七重塔の礎石が当時のまま

 30分程の見学を終え、松本さん、江草さんにお別れし出発。道中、末木先生から、横根・桜井積石塚古墳群について解説していただきました。実は、当初はその古墳群を見学する予定でしたが、大きな石がゴロゴロする山へ入るのは危険と判断し、残念ながら諦めることにしました。石を積み上げた古墳が、山肌のいたるところにあります。このような積石塚は、渡来人によるものとの見方もあります。(下見時の写真を添付します)

山肌はどこも岩場となっています。
これが積石塚。いたるところにありました。

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 「かいてらす」で昼食のあと、甲斐市にある天狗沢瓦窯跡に向います。かつては古代巨麻郡。

バスを降りて天狗沢瓦窯跡に向かうと…
山の向うに富士山が頭をのぞかせていました。

 窯跡がある高台の麓の敷島総合会館駐車場で、甲斐市の保坂武市長さんがわざわざ出迎えてくださいました。当会大野会長と衆議院議員時代、共に国政に携わった盟友です。参加者の皆さんにお土産も頂戴しました。

 現地では、甲斐市教育委員会の長谷川さんが解説をしてくださいました。

天狗沢瓦窯跡

 場所は、南傾斜の畑地で、窯跡が3基見つかったところです。瓦や須恵器を生産していたことがわかっています。出土品から、役所や寺院などでしか使われないものであることから、近くに古代巨麻郡の役所や寺院があったのではないかと推測されています。特に瓦については、ここで生産された瓦を使った寺院がまだ見つかっておらず、今後の調査が待たれます。

案内してくださった長谷川さん
秘書室の大嶌さんも加わってくださました。

 出土した軒丸瓦の文様は「八葉素弁蓮華文」で、明科廃寺(長野県安曇野市)や寿楽寺廃寺(岐阜県飛騨市)と似ていて、元をたどると衣川廃寺(滋賀県大津市)に行きつくそうです。そのことから、ある研究者からは、アルプスを越えてこの文様が甲斐国にやってきた「アルプスの廃寺」とも言われているそうです(苦笑)。

窯跡はどこも傾斜地。ここも谷筋にありました。
皆さん熱心に耳を傾けています

 現地にその出土品を持ってきてくださいました。皆さん食い入るように見ては写真に収めていました。参加者のひとり齋藤さんが、円面硯に筆立てがあるのを見て、とても珍しいと驚いていました。

出土した瓦などを見学
左下に円面硯の筆立て部分が。
出土した軒丸瓦「八葉素弁蓮華文」
この瓦が使われた寺院跡がまだ見つかっていない。

 高句麗滅亡(668年)の後の巨麻(評)郡の成立、さらに716年の高麗郡建郡の際の移住とも関連するのではないかということです。

 何と、天狗沢瓦窯跡が高麗郡建郡につながってくるとは!

皆さん興味深く見ていました。
右から保坂市長さん、大野会長、久保田さん

 保坂市長さんや皆さんに見送られて現地を出発。本日最後の訪問地「山梨県立考古博物館」です。

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 館内では、古代の展示を中心に見学。学芸課長の小林さんが解説してくださいました。ここには、県内各地の古墳から出土した鎧や馬具、須恵器などが展示され、特に古墳時代前期の甲斐銚子塚古墳や中期のかんかん塚古墳の出土品からは、当時の甲斐国の繁栄ぶりがうかがえます。

山梨県立考古博物館(右が小林さん)
県内の出土瓦も展示されています。

 30分程の見学の後、「かんかん塚古墳」「丸山塚古墳」そして全長169mの前方後円墳「甲斐銚子塚古墳」へ。ここは、博物館を含めた公園「甲斐風土記の丘・曽根丘陵公園」になっています。

甲斐銚子塚古墳(横から)
円墳に登って見ると・・・

 甲斐銚子塚古墳を登ると、竪穴式石室の上部に着きます。ここからは、銅鏡などの豪華な副葬品が発見されています。

竪穴式石室がありました。博物館でスマホにアプリを入れると、石室のイラストが見られます。
円墳部分から方墳部分へと降りていきます。

 陽も傾きいざ高麗郡へ。ここで、今回私たちを案内してくださった末木先生とお別れです。道中車内では山梨県の歴史についていろいろとお話くださりありがとうございました。

 さて、今回の甲斐国巡りはいかがだったでしょうか?

いつもながら強行スケジュールになってしまい、じっくりと見学することができませんでした。興味を持たれた遺跡や施設がありましたら、時間をとってゆっくりと訪ねてみてください。

みなさまお疲れさまでした!(マスクしたままでは誰が誰だか!?)

 最後になりましたが、山梨県立博物館の森原さん、笛吹市教育委員会の松本さん、江草さん、甲斐市の保坂市長さん、秘書室の大嶌さん、教育委員会の長谷川さん、皆様ありがとうございました。お陰様で充実したツアーとなりました。改めて感謝申し上げます。

 来年は『常陸国(茨城県)』を予定しております。高麗郡の女影廃寺(郡寺かも!)からは、茨城県新治廃寺と同じ軒丸瓦が見つかっています。ぜひとも訪ねてみたいですね。乞うご期待!