【報 告】あらためて、文献史学から高麗郡建郡を考察 興味深い事柄が次々と・・・  第10回歴史シンポ<前期> 7/16(日)開催

【報 告】あらためて、文献史学から高麗郡建郡を考察 興味深い事柄が次々と・・・  第10回歴史シンポ<前期> 7/16(日)開催

 7月16日(日)、日高市総合福祉センター「高麗の郷」研修室で、第10回高麗郡建郡歴史シンポジウム<前期>を、首都圏各地から84名の参加を得て開催しました。

会場となった「高麗の郷」研修室

 今回は、日本高麗浪漫学会創立10周年を記念して開催したもので、「高麗郡建郡」について、これまでの10年間の研究成果から考察を深めようと企画したものです。前期と称した今回は「文献史学」をもとに、『高句麗から渡来した人々と高麗郡の建郡 ~東アジアの中で検証する~』がテーマ。

 冒頭、高麗1300大野松茂会長と日本高麗浪漫学会須田勉会長が挨拶、日本高麗浪漫学会が10周年を迎えることができたのはご参加くださる皆様のおかげと、これでの活動を振り返り感謝の意を述べました。

高麗1300 大野松茂会長
日本高麗浪漫学会 須田勉会長


 シンポジウムでは、まず、日本高麗浪漫学会中野高行副会長(大東文化大学非常勤講師)が、これまで9回にわたり開催してきた「高麗郡歴史シンポジウム」の内容を概説的に振り返り、どのようなことが論議され発表されたかを説明しました。

中野高行副会長がシンポジウムの趣旨を説明
過去9回の足跡を振り返った

⇓ 高麗郡建郡歴史シンポジウム過去9回の講演(講師)および討論の題目がわかります。


 講演Ⅰでは、日本高麗浪漫学会柿沼亮介研究員(早稲田大学高等学院教諭)が「東アジアの高句麗遺民と武蔵国高麗郡」と題して講演しました。

写真や地図をもとに解説する柿沼亮介研究員
柿沼亮介研究員

 中国北東部から韓半島北部にかけて発生した、高句麗の約700年の歴史概要を説明しました。その後、668年に唐・新羅軍によって滅亡させられた後の、高句麗遺民の動向について解説しました。新羅における高句麗遺民政策、唐の高句麗遺民政策、そして日本における高句麗遺民についての状況をそれぞれ史料から紐解き、考察しました。

 716年の高麗郡建郡は、高句麗遺民を集めて、その技術を活用し開拓を行ったもので、この時点では、政治的なメッセージ性を認めることはできないと説明しました。また、渤海との交流から「高麗」に着目し、二人の研究者の説を紹介。また高麗朝臣一族が遣渤海使となったことなどからも、高句麗遺民を政治的に利用していたとの見解を示しつつ、渤海と外交交渉の展開や国内情勢にも着目してさらに検討する必要性を指摘しました。


 講演Ⅱでは、日本高麗浪漫学会赤木隆幸研究員が「高句麗から渡来した人々」と題して講演しました。

史料を多角的に分析し導き出す赤木隆幸研究員
赤木隆幸研究員

 東国七国や武蔵国に住んでいた高麗人については、文献史料に見ることができないため、日本における高句麗系渡来人の全国分布状況やその職掌から、古代高麗郡の高麗人について考察しました。

 まず、高句麗系渡来人の分布状況を、「日本書紀」や「続日本紀」などから丁寧に拾い上げ、提示しました。その結果、高句麗系渡来人は畿内に多く、それは彼らの技術や知識が朝廷に有用であったためと説明しました。また、高句麗系渡来人の職掌についても同様にさまざまな史料から抽出すると、外交や学識に携わったものが多くいたことがわかりました。また技術職(皮革・牧、造営・画工、医術など)についても注目されるところで、武蔵国や七国には、高句麗系との確証はないが、工人としてではなく技術を持った百姓であった可能性も指摘しました。さらに高麗郡三廃寺建立から、造寺工や画師なども高麗郡にいたのではないかとの見解を述べました。


パネルディスカッションの様子

 パネルディスカッションでは、「高句麗から渡来した人々と高麗郡の建郡 ~東アジアの中で検証する~」をテーマに、荒井秀規日本高麗浪漫学会副会長(明治大学講師)を交えた4人が、講演の内容をもとに幅広く論議が展開され、今後の研究への期待も示されました。新しい視点も論議され、参加者は大変満足した様子でした。

日本高麗浪漫学会4人の先生方
中野高行副会長
荒井秀規副会長
柿沼亮介研究員
赤木隆幸研究員
白熱した討論が続く


 最後に、荒井秀規副会長が閉会の挨拶に立ち、「12月に開催する日本高麗浪漫学会10周年・第10回高麗郡建郡歴史シンポジウム後期では、考古学の観点から高麗郡建郡について考察します。ぜひご参加ください」と締めくくりました。

閉会の挨拶をする荒井秀規副会長
第10回歴史シンポジウム<前期>は閉会した

地元はもとより、遠方からも多くの皆様にご参加いただきました。誠にありがとうございました。

§第10回高麗郡建郡歴史シンポジウム<後期>§

日時:2023年12月17日(日) 開会13:00
会場:日高市総合福祉センター「高麗の郷」

考古学の観点から、高麗郡建郡の謎に迫ります。ぜひご参加ください!
詳細が決まり次第、当ホームページに掲載します(10月下旬頃)。