高麗浪漫学会通信  第12号

高麗浪漫学会通信  第12号

高麗浪漫学会通信  第12号            2016年6月15日

編集・発行 高麗浪漫学会
〒350-1231 埼玉県日高市鹿山283番地5(すみや電気2F)
TEL:042-978-7432 E-mail:info@komagun.jp

7月16日から8月31日まで、埼玉県立歴史と民俗の博物館で特別展「高麗郡1300年~物と語り」が開催されます。当会でも、8月23日(火)午後に会員を対象とした歴史見学会を予定しています。また、7月31日には、東京大学大学院の早乙女雅博教授をお招きして、公開歴史講演会を行います。当日の午前11:30からは、高麗浪漫学会の第4回定期総会も実施予定です。立て続けに様々な行事が開催されますが、日程を調整して、ぜひ積極的にご参加ください。(高麗浪漫学会事務局:山田英次)
《歴史コラム》 高麗人の足跡6 『新撰姓氏録』にみえる高句麗系氏族(その1)
(高麗浪漫学会理事 赤木隆幸)
弘仁6年(815)に撰上された『新選姓氏録』には、諸蕃条として渡来系氏族の記載があり、この中には「高麗」という高句麗系氏族の項がたてられています。内容は主に「〇〇より出づ」というように、その氏族の出自(祖先とする人物)が記されています。以下にそれぞれを列挙いたしますので、ご参照ください。尚、本号では左京諸蕃下条のみで、その他は次号以降に掲載いたします。
『新撰姓氏録』左京諸蕃下条
高麗
高麗(こまの)朝(あそ)臣(ん)。高句麗王、好台(こうたい)の七世孫、延典(えんてん)王(おう)より出(い)づ。
豊原連(とよはらのむらじ)。高麗国の人、上部(しょうほう)王(おうの)虫(むし)麻呂(まろ)より出づ。
福(ふ)当連(たぎのむらじ)。高麗国の人、前部能婁(ぜんほうのうる)より出づ。
御笠連(みかさのむらじ)。高麗国の人、従五位下、高庄子(こうしょうし)より出づ。
出水連(いずみのむらじ)。高麗国の人、後部(こうほう)能(のう)鼓(こ)兄(けい)より出づ。
新城連(にいきのむらじ)。高麗国の人、高福(こうふく)裕(ゆう)より出づ。
男捄連(をゆかのむらじ)。高麗国の人、高道士(こうどうし)より出づ。
高史(こうのふひと)。高麗国元(げん)羅(ら)郡の杵(しょ)王(おう)の九世孫、延挐(えんだ)王(おう)より出づ。
日置造(へきのみやつこ)。高麗国の人、伊利須(いりす)意(お)弥(み)より出づ。
福(ふ)当造(たぎのみやつこ)。高麗国の人、前部(ぜんほう)志発(しはつ)より出づ。
河内(かわちの)民首(みたみのおびと)。高麗国の人、安劉(あんりゅう)王(おう)より出づ。
後部(こうほうの)薬使(くすしのお)主(み)。高麗国の人、大兄(だいけい)憶(おく)徳(とく)より出づ。
王(おう)。高麗国の人、従五位下、王(おう)仲(ちゅう)文(ぶん)〈法名は東楼(とうろう)〉より出づ。
高(こう)。高麗国の人、高助斤(こうじょきん)の後(すえ)なり。
高(こう)。高麗国の人、従五位下、高金蔵(こうきんぞう)〈法名は信(しん)成(せい)〉の後なり。
※詳しくは、佐伯有清『新撰姓氏録の研究』考證篇第五(吉川弘文館、1983年)を参照ください。

《お知らせ・掲示板》
1:特別展「高麗郡1300年―物と語り―」開催!!
・・・7月16日(土)~8月31日(水)“埼玉県立歴史と民俗の博物館”・・・・
特別展「高麗郡1300年―物と語り―」では、考古資料や歴史資料を中心に紹介し、古代高麗郡の実像、その歴史が現在までどのように語り継がれてきたのかを明らかにします。
◆展示の見どころ
高さ5mを超える広開土王碑模刻本
高麗人たちの故郷、高句麗が最も盛隆を誇り勢力を拡大したのは、広開土王(好太王)の時代です。この広開土王の業績を高句麗王の系譜、王墓の墓守規定とともに高さ約6mの巨石に残したものが「広開土王碑」です。今回展示する広開土王碑模刻本(高麗神社所蔵)は、昭和5年までに高麗神社に伝わったとされるものです。原石を拓本したものではなく、模刻本と呼ばれるものですが、6mを超える巨石の迫力を充分に伝えてくれるもので、またそこに記された内容に対する人々の関心と興味が詰まった資料といえます。資料は碑文の部分のみとなりますが、その大きさを感じていただくために、特設ケースに展示します。
高麗大神和光と記す『箱(はこ)根(ね)山(さん)縁(えん)起(ぎ)并(ならびに)序(じょ)』
高麗(こま)若光(じゃっこう)は、よく知られているとおり天智5年(666)、高句麗の使者(玄武若光)として来日し、母国の滅亡により列島に留まったとされています。その後大宝3年(703)に「高麗王」姓を賜り、以降国史には登場しませんが、没後は高麗神社の御祭神として高麗郡の人々の信仰の対象となりました。そうした若光の伝承は高麗郡だけでなく相模国にも残されています。『箱根山縁起并序』(箱根神社所蔵)は、箱根権現の歴史を記した鎌倉時代の原本を室町時代に書写したものです。文中に「百済明神」「新羅明神」とともに若光とされる「高麗大神和光」の名と、和光を大磯に奉り高麗寺と名付けたことが記されています。現在も大磯には高麗寺、高来(高麗)神社が所在しています。展示では、高麗郡建郡記事を記す『相(さ)模(がみの)国(くに)鶏(けい)足(そく)山(さん)高(こう)麗(らい)寺(じ)略(りゃく)縁(えん)起(ぎ)』と合わせて相模国における若光伝承を紹介します。
本展ではそのほか、古墳時代以降の県内・東国に残る渡来人の足跡や、古代高麗郡内から出土した考古資料、高麗神社や聖天院に伝わる宝物も紹介します。また、近世にみられる古代高麗郡に対する意識や、近代における朝鮮半島と日本の歴史的な関係を示すものとして注目された高麗郡について、地域に残された古文書から読み解きます。展示を通し、高麗郡の1300年にわたる物語りに思いを馳せていただければ幸いです。
(埼玉県立歴史と民俗の博物館学芸員 宮原正樹)

2:特別展の歴史見学会開催(参加者募集)
日時・・8月23日(火)午後1:30   現地集合:博物館正面玄関に午後1:20までに
会場・・埼玉県立歴史と民俗の博物館(電話048-645-8171) 観覧料:600円
交通・・東武野田線「大宮公園駅下車・徒歩5分」詳しくは開催案内パンフをご覧ください。
参加を希望される方は、高麗1300事務局:担当・山田英次へ8月19日までにご連絡ください。
(一社)高麗1300事務局:電話042-978-7432 メール:info@komagun.jp

3:(7月31日)公開歴史講演会および第4回高麗浪漫学会定期総会の日程ご案内
高麗浪漫学会の会員の皆様には、後日、正式に定期総会のご案内通知を差し上げますが、7月31日の日程は次のようになりますので、よろしくお願いいたします。
11:30~12:00 日高市文化体育館ひだかアリーナ1F会議室「第4回定期総会」開催
12:00~12:30 昼食タイム(昼食弁当500円・事前に予約をとります)
13:00~16:30 第3回公開歴史講演会(早乙女雅博先生・須田勉先生の講演)
17:30~19:30 高麗浪漫学会「懇親会」(JR高麗川駅前「はし本」会費5000円)予定