【報告】渡来文化ネットワーク・サミット in 東京 メッセージを発信

【報告】渡来文化ネットワーク・サミット in 東京 メッセージを発信

渡来文化ネットワーク・サミット㏌東京「東アジアの国際交流 ~渡来から未来へ~」が2016年9月3日、國學院大學(東京都渋谷区東4-10-28)学術メディアセンターで開催されました。主催は同大學博物館と一般社団法人高麗1300です。

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各地の渡来文化ゆかりの地が集まり、未来へメッセージを発信するという「渡来文化ネットワーク・サミット」。高麗郡建郡1300年記念事業の中でも初めての試みでした。

来場者は260人。伝統ある大学の学術関係者との連携事業であり、また、都内で行われるということもあり、高麗郡の地元埼玉県だけでなく、都内近県など広い地域からの来場者も目立ちました。事前申し込みでは早くも定員に達してしまい、多数のキャンセル待ちが出るほどでした。

ネットワーク・サミットの司会進行は同大學博物館の深澤太郎准教授。午前の部の記念講演Ⅰでは、日本と韓国で共通の教材をつくる歴史教育プロジェクトにも参加している國學院大學の山﨑雅稔助教が、「〝渡来人〟と日韓関係の未来」をテーマに講演。互いに両国の歴史や日韓関係史を正しく理解することなしに新しいパートナーシップは構築できないこと、渡来人や渡来文化への関心がその一歩となるために、よりよい教材づくりが求められていることなどを話されました。

 

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記念講演Ⅱでは、関東学院大学の田中史生教授が「〝渡来人〟と〝日本人〟」をテーマに、渡来人、帰化人という言葉にまつわる古代史研究の歴史をひもときながら、渡来人と帰化人という用語の多様性や解釈の変遷にふれたお話が展開されました。

午後の部では数々の事例発表が行われました。最初に代表事例発表として奈良県明日香村の森川裕一村長が登壇。古代の日本の中心であり、〝日本人の心のふるさと〟といわれる明日香村を、国内だけでなく、世界の人々にも知ってもらおうとどんな取り組みをしているのか、ユーモアを交えて話してくださいました。

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次に、古代東アジアからの渡来人・渡来文化ゆかりの地で、その歴史を元に地域活動をしている5団体が順番に事例を発表。5団体は、群馬県高崎市の「歴史と文化を学ぶ会」、長野県松本市の「信州渡来人倶楽部」、滋賀県大津市の「近江渡来人倶楽部」、大阪市枚方市の「百済の会」、埼玉県日高市の「高麗1300」です。

「歴史と文化を学ぶ会」は、多胡郡建郡1300年を5年前に終え、現在は講演会を中心に活動しています。また多胡碑など「上野三碑」が世界記憶遺産国内候補に決定しており、来年の発表を待ち望んでいます。活動は、県や市、文化庁の支援事業や民間企業の支援を受けているものの厳し運営状況。

「信州渡来人倶楽部」は、松本市を中心に、日本人を先輩渡来人、在日コリアンを後輩渡来人、ニューカマーは新しい渡来人として偏見差別のない社会を目指して活動。「渡来人まつり」は今年で11回目を数え、地域の交流、日韓の交流のお手伝いをしています。

「近江渡来人倶楽部」は、朝鮮半島との関わりがとても深い近江(滋賀県大津市)にあります。河代表は、在日コリアンとしての立場から、日本がより良い国となるようにとの思いで活動していることを熱く語りました。渡来人歴史館や多文化共生支援センターといった実活動は、行政も支援するまでに。

「百済の会」は、大阪府枚方市にあり、特別史跡「百済寺跡」を基に活動。もとは花村会長の情熱により枚方市もバックアップし、現在「枚方・百済フェスティバル」を教育委員会や文化観光協会と共に開催、地元の子どもたちも多く参加しています。発表では花村会長が母親から教えられた人生訓も披露。

「一般社団法人高麗1300」は、ちょうど1300年前に埼玉県日高市と飯能市周辺に高麗郡が置かれたことが活動の原点。現在1300年祭の真っ只中で、多くの事業を行っているが、それぞれ協力団体との協働で実施できた。来年度以降も継続して活動し、地域振興を図っていきたい。

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事例発表の後、2人の講師と5団体代表、森川村長、深澤准教授が登壇し、質問や意見交換、情報提供などが交わされました。そして最後に、「異文化と、その歴史に対する尊敬と理解を深める取り組みが、世界中の人々の関係によりよい影響をもたらしてくれる」として、友好のメッセージ「渡来から未来へ 友好の輪を広げよう」を世界に向けて発信しました。