【報 告】今年も熱心に受講 2023年度高麗郡歴史講座 全日程終了
お陰様で今年も大盛況。皆さんの向学心には頭が下がります。熱心に通っていただきありがとうございました。
今年で3年目を迎えた「高麗郡歴史講座」は、初めて外部から講師を招いて実施しました。高麗郡の歴史そこだけにはとどまらず、地理や地勢、時代の流れなどを知ることが、より充実した『?』につながってきます。今年で3年目を迎えた「高麗郡歴史講座」は、初めて外部から講師を招いて実施、より深くより広く歴史がつながっていくワクワク感を味わうことができました。
6月講座
「埼玉古墳群のナゾを解く」 3日(土):古墳群の出現と稲荷山鉄剣/17日(土):古墳群の構造と王権の関わり そして終焉へ 講師:高橋一夫先生(日本高麗浪漫学会前会長・元埼玉県立歴史と民俗の資料館館長・歴史学博士)
埼玉古墳の七つのナゾについて探っていきました。埼玉古墳群の出現前から解説、そして古墳の動向を『日本書紀』などから紐解きました。稲荷山古墳のナゾについては、出土した須恵器や土師器などから築かれた年代を特定したことや被葬者の所説について、埼玉古墳群の概要、特に「二重周壕」や「造り出し」、「中堤張り出し」といった特徴があることなど知ることができました。また古墳群の構造を、主軸方位による分類によって三つの系列に分け、首長権の継承の有無によってさらに分類することでより深く古墳群をみることができました。
将軍山古墳については、石室の側壁が上総国(千葉県)・鋸山周辺の「房州石」であることや、金銅製や鉄製などの装身具、武具や馬具といった稲荷山古墳を凌駕する副葬品などの興味深い話が続きました。最後に、律令制度が進む中で、埼玉古墳群が終焉を迎えた背景について考察しました。また、講義途中のコーヒーブレイクでは、高橋先生が関わった「稲荷山鉄剣」を復元した際のエピソードが紹介されました。二日間を通じて埼玉古墳群についてより立体的に理解が深まりました。(42名受講)
7月講座
「古代の生業 ~入間郡、高麗郡の窯業・鍛冶・牧~」 1日(土)・8日(土) 講師:加藤恭朗先生(日本高麗浪漫学会研究員)
まずは「窯業」について考察。南比企窯跡群(鳩山町)は、土師器から須恵器の移行や勝呂廃寺などの寺院の瓦を焼いていたことから、早い段階から須恵器や瓦の生産技術が定着したこと。また、製品の流通について着目し、武蔵国全域をカバーする生産量があったことなど、「入間・比企型土器」について興味深い話が続きました。その後、瓦と須恵器を生産する体制が構築され、武蔵国分寺瓦の生産などで発展していく過程を分かりやすく知ることができました。最後に東金子窯跡群にふれ、南比企との共通点が多く高麗郡建郡と連動することなど、興味深い話が続きました。
また、高麗郡建郡によって渡来人由来の手工業技術が定着、発展していったことを考察。鉄の生産は、共通点が多いことから、南比企窯跡群の発展と関連づけました。また東山道武蔵路の存在による馬具の生産や農具など身近な製品が生産されていたことや、周辺の遺跡から馬の存在を示す遺物が見つかっていることから、東山道武蔵路の駅家への馬の供給のための「牧」の存在にも触れました。最後に、養蚕、機織りについて触れ、若葉台遺跡と養蚕の可能性について解説しました。当時の人々の生業や生活を知る良い機会となりました。(37名受講)
9月講座
「入間郡と高麗郡の古代寺院と仏教」 2日(土):国家の仏教と勝呂廃寺・女影廃寺/9日(土):山林修行と墳墓の寺 大寺廃寺・高岡廃寺 講師:須田 勉先生(日本高麗浪漫学会会長・元国士舘大学教授)
まずは、大寺廃寺について考察。丘陵地に建てられた大寺廃寺は、山林寺院の特徴を持つ建物配置や建物の構造や出土遺物について細かく解説しました。大寺廃寺と女影廃寺は、丸瓦の文様が関係性を示していること、僧侶の山林修行の場となっていたとのことでした。
続いて、勝呂廃寺と女影廃寺。勝呂廃寺の伽藍は法隆寺式伽藍配置と想定され、出土瓦の文様などを分析、Ⅰ期では、比企郡の影響が大きいことや甲斐国天狗沢1号瓦窯の丸瓦と技法が共通することなど興味深い話が続きました。女影廃寺は、高麗郡家に想定される拾石・王神遺跡から直線で2キロの平地に位置することから、郡寺であると特定、国分寺と異なり国家の援助はないが、王権擁護・国家鎮護などの祈願の場であったと解説しました。また、出土瓦の分析から8世紀中頃の建立であることや、出土した常陸国新治廃寺と同范の丸瓦について解説しました。さらに、出土瓦の中には、軒先瓦の文様が女影廃寺独自のものであり、特に高句麗の瓦の文様と類似していることから、渡来系移民によって造られたものではないかとの話は、とても興味深いものでした。古代高麗郡の三つの廃寺を深掘した講座となりました。(39名受講)
10月講座・前
21日(土):調布市染地遺跡から見えてきた古墳時代の特異な火どことすまい ~多摩郡狛江郷近隣地の調査~ 講師:及川良彦先生(東京都埋蔵文化財センター 調査研究主任)
調布市染地遺跡の発掘調査の結果から見えてきた様々な当時の痕跡を細かく解説しました。染地遺跡は36万㎡の広大な面積から、縄文時代晩期から近世までのさまざまな遺物や遺構が見つかっています。遥か古代から現在まで、脈々と人々が住み続けてきた場所として、大変重要な遺跡ということが解りました。中でも古墳時代中期の住居について詳しく考察、和泉大地震によって地下に上屋ごと沈み込んだ竪穴住居跡など、地震で倒壊した様子を詳しく解説しました。また、当時のカマドの構造や土器などの出土遺物から、当時の調理の様子も探りました。どのような暮らしがあり、また地震などの災害はどうだったのか、当時の様子をうかがい知ることができた、大変意義深い講座となりました。(39名受講)
10月講座・後
28日(土):国宝白鳳仏と深大寺 ~高麗福信が仲介か、来歴の謎に迫る~ 講師:赤城高志先生(深大寺学芸員)
昨年の歴史講座(荒井秀規先生)で、にわかに表舞台に踊り出た?「深大寺白鳳仏と高麗福信の関係」から、今回の講座のテーマとなりました。まずは、深大寺の位置や自然環境、歴史の概略を紹介。そして、「深大寺真名縁起」と「深大寺仮名縁起」「深大寺縁起絵巻」に書かれた、深大寺開祖・満功上人誕生について解説しました。続いて深大寺白鳳仏について詳しく説明しました。最後に深大寺白鳳仏の来歴について、三つの仮説を紹介、そして高麗福信と満功上人の異母兄弟説に言及し、二人の年表や、調布市入間町城山遺跡から出土した墨書土器「高大寺」にも触れ、深大寺の白鳳仏の来歴に迫りました。深大寺の歴史や白鳳仏の存在、そして高麗福信とのつながりなど、改めて興味を深める講座となりました。(39名受講)
緊急企画「史跡さんぽ」
今回、初めて講座に関連した「史跡さんぽ」企画を実施しました。
①「埼玉古墳群見学会」
高橋一夫先生の6月講座で学んだ「埼玉古墳群」の見学会を、7月22日(土)に実施しました。10時に現地に集合、何と行田邦子行田市長が駆けつけてくださいました。大野会長が「今度、行田に行くよ」と声を掛けていたそうです。しっかり勉強します!さて見学会は、さきたま史跡の博物館の学芸員宮原正樹さんが案内してくださいました。丸山古墳にはじまり、稲荷山古墳、将軍山古墳展示館、二子山古墳などを巡りました。宮原さんは、古墳一つ一つ丁寧に解説してくださいました。その後、さきたま史跡の博物館内を自由見学しお昼過ぎに解散しました。猛暑を心配していましたが、幸い太陽が雲に隠れていたため、幾分凌ぎやすく歩くことができました。高橋先生の講義を聞いたあと、直接現地を見ながら宮原さんの解説を聞いて回ることで、より一層理解が深まりました。(20名参加)
②「深大寺と白鳳仏、ゆかりの寺社を巡る」
赤城高志先生の10月講座の後、11月18日(土)に実施しました。深大寺山門前に集合、早速、赤城先生の案内で本堂内へ。深大寺法務部執事の林田堯瞬祇園寺住職が解説してくださいました。本尊の「木造阿弥陀如来坐像」は宝髻(ほうけい)を付け、宝冠を被るなど大変珍しい像です。続いて釈迦堂へ。今回一番の目的「銅造釈迦如来倚像」、あの「深大寺白鳳仏」を、赤城先生の計らいで、ガラスの内側に入っての特別拝観となりました。皆さん大満足の様子でした。門前でお蕎麦をいただいたあと、「深沙大王堂」や満功上人の木像が安置されている「開山堂」、「元三大師堂」を見て回りました。さらに深大寺境内を出て、満功上人の祖父母を祀る「虎狛神社」と満功上人が開いた「祇園寺」を巡りました。祇園寺では、林田住職が薬師堂内で解説してくださいました。深大寺の歴史満載の充実した『史跡さんぽ』となりました。(18名参加)
来年度(2024年度)も『高麗郡歴史講座』を開講する予定です。4月中頃には詳しくご案内いたします。募集が始まりましたら、定員がございますので、お早めにお申込みください。
お問い合わせは、高麗1300事務局まで