高麗浪漫学会通信 第14号
高麗浪漫学会通信 第14号 2016年月10月14日(木)
編集・発行 高麗浪漫学会
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はじめての記念すべき
渡来文化 ネットワーク・サミット開催
渡来ゆかりの各地が集まり 未来へメッセージを発信
渡来文化ネットワーク・サミットin東京「東アジアの国際交流 ~渡来から未来へ~」が2016年9月3日(土)、國學院大學(東京都渋谷区)学術メディアセンターで開催されました。高麗郡建郡1300年記念事業の中でも初めての試みで、一般社団法人高麗1300と同大學博物館の共同開催です。学術的な記念講演、渡来文化ゆかりの地域団体による事例発表、ディスカッションなどの交流を通して、「異文化とその歴史に対する尊敬と理解を深める取り組みが、日韓だけでなく世界中の人々の関係により良い影響をもたらす」との共通認識を深め、未来へ向けて友好のメッセージが発信されました。
「東アジアの国際交流 ~渡来から未来へ~」をテーマに
記念講演は「〝渡来人〟と日韓関係の未来」「〝渡来人〟と〝日本人〟」
今回のサミットの来場者数は約250人。歴史研究で知られる大学の学術関係者との連携事業であり、都内で行われるということもあって、高麗郡の地元埼玉県だけでなく、都内近県など広い地域からの来場者も目立ちました。事前申し込みで早くも定員に達してしまい、多数のキャンセル待ちが出るほどでした。
午前の部の記念講演Ⅰでは、日本と韓国で共通の教材をつくる歴史教育プロジェクトにも参加している國學院大學の山﨑雅稔助教が、「〝渡来人〟と日韓関係の未来」をテーマに講演。互いに両国の歴史や日韓関係史を正しく理解することなしに新しいパートナーシップは構築できないこと、渡来人や渡来文化への関心がその一歩となるために、よりよい教材づくりが求められていることなどを話しました。
記念講演Ⅱでは、古代史を研究する関東学院大学の田中史生教授が「〝渡来人〟と〝日本人〟」をテーマに講演。渡来人、帰化人という言葉にまつわる多様な解釈とその変遷についての解説は、「日本」「日本人」とは何かという問いと深く結びついていることを実感させるものでした。今後渡来人をどうとらえていくべきかについて考える、示唆に富んだお話が展開されました。
渡来文化ゆかりの6地域が事例を発表
◆奈良県明日香村(森川裕一村長)
午後の部では、最初に代表事例発表として、先進的取り組みを行っている明日香村の森川村長が登壇。古代の日本の中心であり、〝日本人の心のふるさと〟といわれる明日香村の魅力を紹介しながら、国内だけでなく、世界の人々にも知ってもらおうとどんな取り組みをしているのか、ユーモアを交えて話しました。参加の各団体に、明日香村との連携を呼びかけ、発表を締めくくりました。
次に、古代東アジアからの渡来(人)文化ゆかりの地で、その歴史を元に地域活動をしている次の5団体が事例を発表しました。
◆歴史と文化を学ぶ会(群馬県高崎市 結城順子理事長)
多胡郡建郡1300 年を5 年前に終え、現在は講演会を中心に活動。文化庁の補助、県や市、民間企業の協力を受けて活動しています。多胡碑など「上野三碑」が世界記憶遺産国内候補となり、「来年の結果発表を待ち望んでいます」。
◆信州渡来人倶楽部(長野県松本市 金子亨代表代行)
日本と韓国の友好親善に役立ちたいと発足。日本人を先輩渡来人、在日コリアンを後輩渡来人、ニューカマーは新しい渡来人として偏見差別のない社会を目指して活動。「渡来人まつり」は今年で11 回目を数え、地域の交流、日韓の友好親善のお手伝いをしています。
◆近江渡来人倶楽部(滋賀県大津市 河炳俊代表)
ルーツを隠さず堂々と生活し、地域社会に貢献することを旨とする在日コリアンと、包容力と多様性を持った「心豊かな社会」を願う日本人によって構成される同会。日本社会に本当の意味で貢献したいとの熱い思いから、世界から尊敬される日本となるために、歴史を学べる渡来人歴史館、多文化共生支援センターを開館開設し、国際理解へ積極的に取り組んでいます。
◆百済の会(大阪市枚方市 花村桓代表)百済王家先祖供養のための特別史跡「百済寺跡」など、百済に関する歴史が残る枚方市。同会は、2001 年から始まった「枚方・百済フェスティバル」を提案。今では市教育委員会や文化観光協会と共に実行委員会を組織し、開催しています。世界遺産登録への夢をもって活動中。
◆一般社団法人高麗1300(埼玉県日高市 平野直樹事務局長)
ちょうど1300 年前に日高市と飯能市周辺に高麗郡が置かれたことが活動の原点。「現在1300 年祭の真っ只中で、多くの事業を行っていますが、それぞれ協力団体との協働で実施できました。来年度以降も継続して活動し、地域振興を図っていきたい」。
事例発表の後はディスカッション。講師と発表者全員が登壇し、活発な意見が交わされました。どの団体も運営資金の確保が課題でした。
そして最後に、友好のメッセージ「渡来から未来へ 友好の輪を広げよう」を発信します、との宣言文をまとめました。
宣言文
長い歴史を振り返ると、東アジアの人々が相互に行き来し、影響を与え合うことで、
人類史の一端を切り拓いてきたことがわかります。とりわけ日本列島は、朝鮮半島か
ら多くの渡来人を受け入れてきました。そして渡来人たちは、日本列島の社会に溶け
込み、農耕・土木・製陶・紡織などの産業技術や、新たな知識をもたらすことで、日
本の国づくりにも大きな役割を果たしてきたのです。このように、お互いの独自性と
共通性を認め合ってきた両地域は、時に蜜月の関係を保ち、時に不幸な時代も共有し
ながら、今日の繁栄を迎えるに至りました。
しかしながら、いまや国境を越えたグローバルな時代にある一方で、世界の各地に
て頻発する大小の紛争は絶えることを知りません。そのような中で、ここに集う私た
ちは、改めてアジアにおける古代以来の国際交流に学び、先人の足跡に思いを致すこ
とで、これからの友好親善に活かすことのできる大きな知恵を得たのではないでしょ
うか。
私たちは、異文化と、その歴史に対する尊敬と理解を深める取り組みが、日韓はも
とより、東アジア、さらには世界中の人々の関係に、より良い影響をもたらしてくれ
るものと信じ、世界に向けて友好のメッセージを発信します。
メッセージ
渡来から未来へ 友好の輪を広げよう
企画展を同時開催
『日本に根付いた渡来人』
國學院大學博物館で、サミット当日の9月3日から約40 日間、企画展「武蔵国高麗郡建郡1300 年『日本に
根付いた渡来人』高麗郡と高麗神社」も開催されました。
高句麗とはどんな国だったのか、そして高麗郡建郡のころの様子、その後の高麗氏と高麗神社の歴史を、同大學所蔵の貴重な資料の数々や、高麗神社、日高市教育委員会からの資料を基に分かりやすく紹介しました。